自己破産

奨学金は自己破産するとどうなる?連帯保証人に迷惑かけたくない場合の対処法は?

奨学金は自己破産するとどうなる?連帯保証人に迷惑かけたくない場合の対処法は?
  • 奨学金の返済が苦しい
  • 奨学金を自己破産するデメリットを知りたり
  • 奨学金の返済が困難な場合、自己破産以外の方法を教えて欲しい
奨学金が返済できずに自己破産する若者のニュースを見ました。実は、奨学金ってなかなか解決が難しい借金なんですよね。

奨学金は低金利の借金です。とはいえ、高額な借金です。

日本学生支援機構が公表している令和元年度の奨学金返回収状況のレポートによると、令和元年時時点での奨学生債権数は479万3000件、そのうち、延滞件数は以下の通り報告されています。

延滞年数
1年未満 1~2年 2~3年 3年以上
第一種 66,000件 5,000件 3,000件 87,000件
第二種 174,000件 13,000件 5,000件 30,000件
合計 240,000件
(債権数全体の5%)
18,000件
(債権数全体の0.3%)
8,000件
(債権数全体の0.017%)
117,000
(債権数全体の0.25%)

※スマホでご覧の方は左右にスクロールできます。
※引用元:日本学生支援機構,変換金の回収状況及び令和元年度元年度業務実績の評価について

厳密には1人で第一種と第二種の両方を借入する人がいるため、1件=1人とは言えませんが、ざっくり概算すると、奨学金の滞納者は全体の5.5%以上になります。

つまり、100人中5人以上が卒業後に奨学金の返済ができなくなっていることになります。

そして、奨学金の自己破産件数は毎年おおよそ2,000人におよびます。
※参照:日本学生支援機構

なお、年間の自己破産件数は約8万件になるため、そのうち奨学金を含む自己破産件数は全体の25%を占めていることがわかります。

奨学金の利用者および借入額を考えると、奨学金で自己破産する人ってそんなに多くない印象があります。私は借金200万円で自己破産したので…。

実は、奨学金は私が自己破産した原因のリボ払いやカードローンなどと違って、“自己破産し難い借金の仕組み”になっています。

その原因が『人的保証人制度』です。

本ページでは「奨学金は自己破産で解決できるのか」ということについてお話します。

奨学金を自己破産するとどうなる?

結論から言うと、、奨学金は自己破産で免責することができます。つまり、奨学金を含むあなたの借金は自己破産することですべて返済義務がなくなります。

ただし、奨学金を自己破産しても、あなたから返済義務がなくなっただけであり、残りの返済は連帯保証人、保証人へと引き継がれます。

もし、ご両親や親戚に連帯保証人、保証人になってもらっている場合は「自己破産したからすべて解決」というわけにはいきませんよね。

奨学金の保証制度には2種類ある

  • 人的保証制度
    → 奨学金を借入する際、原則として父母を連帯保証人に、4親等以内の親族を保証人にする制度
  • 機関保証制度
    → 日本学生支援機構が指定する保証機関を連帯保証人にすることができる制度。ただし、奨学金から毎月保証料が天引きされる

どちらの保証制度を利用して奨学金を借入しているかによって、自己破産することにより生じる影響(債務の引継ぎなど)が異なります。

なお、「機関保証制度」を利用している場合は、自己破産で奨学金を免責するメリットは大きいでしょう

人的保証制度を利用している場合

両親(例えば、お父さん)を連帯保証人にしている場合、あなたが自己破産すると、残りの返済義務が連帯保証人へ移ります。

この時、返済残高にかかわらず、日本学生支援機構は連帯保証人に対して一括請求を求めます。ただし、交渉することで分割返済に変更してもらうことも可能です。

なお、連帯保証人が返還に応じれば、保証人(4親等以内の親族)への請求はありません。

人的保証制度で奨学金を借りていた場合、自己破産すると両親や親戚に返済義務が移るため、事前の同意がなければ身内であってもトラブルになるかもしれません。。

「私は両親と決別している…」という状況でもない限り、人的保証制度で借入した奨学金を自己破産しても根本的な解決にはならないでしょう。

むしろ、家族関係が悪くなったり、あなただけでなくご両親までも自己破産する“一家破産”という事態になりかねません。。

機関保証制度を利用している場合

機関保証を利用している場合、連帯保証人は機関保証会社になるため、あなたが自己破産して奨学金を免責しても、ご両親や親戚に迷惑をかけることはありません。

機関保証制度を利用すると、毎月振り込まれる奨学金から保証料が天引きされます。だたし、これは保証料ではなく機関保証制度の“利用料”です。

例えば、大学院修士課程の2年間で第一種奨学金月額88,000円を貸与した場合の保証料合計は73,296円です(参考:奨学金貸与・返還シミュレーション)。

「機関保証に保証料を支払ているので、もしも返済ができなくなった場合は返済を肩代わりしてくれる」と思っている人も多いと思いますが、これは“誤解です。

機関保証制度はあなたを保証する制度ではない

機関保証制度を利用している奨学生が毎月の返済を延滞した場合、保証機関があなたに代わって代位弁済(立て替えて返済)します。その後、あなたは保証機関に対して代位返済額を“一括返済”しなけれないけません。もし返済を延滞した場合は、年率10%の遅延損害金が課せられます。

つまり、保証機関制度は奨学生に対してなにかを保証する制度ではありません。
※保証機関への返済を延滞すると、年率10%の遅延損害金が発生

機関保証制度で奨学金を借入している場合は、前向きに自己破産を検討することをおすすめします。

ちなみに、すでに奨学金を3ヶ月以上延滞している、もしくは機関保証に代位弁済してもらっている場合、あなたの信用情報はブラックリストに登録されています。

ブラックリスト情報は借金を完済後10年間は信用情報に登録され続けるため「自己破産した場合と同じ状況が続く」ということを留意しておきましょう。

あなたの借金はいくらですか?
自己破産する借金の目安はいくら?破産申請者の28%以上が負債総額100~300万円
自己破産する借金の目安はいくら?破産申請者の28%以上が負債総額100~300万円 返済を続けているのに借金の元本が減らない 滞納が続いて遅延損害金が発生している このまま返済を続ける自信がない ...

※借金200万円以上は普通に働いて返せない…

奨学金を自己破産するデメリットとは?

奨学金は返済できそうにない…
自己破産する勇気はない…
自己破産すると人生終了…

このように思っている人も多いかも。

私個人の意見として「自己破産しても人生は終わらないし、それよりも考えるべきことは連帯保証人のことでは?」と思います。

特に人的保証制度を利用している場合は、あなただけの問題ではないため、ご家族と話し合う必要があるでしょう。

そのうえで、以下の自己破産のデメリットを考えましょう。

  • 連帯保証人、保証人に返済義務が移る
  • ブラックリストに登録される
  • 財産が没収される
  • 破産申立期間中は就業制限が発生する
  • 官報に氏名・住所の個人情報が登録される

連帯保証人、保証人に返済義務が移る

人的保証制度を利用して奨学金を借入している場合は、自己破産しても連帯保証人であるご両親や親戚に返済義務が移ってしまいます。

そして連帯保証人が返済できない場合は、あなたに引き続き、ご家族まで自己破産せざるを得なくなってしまいます。その後は4親等以内の親戚(叔父や叔母など)に…。

というように、“一家破産”に陥るリスクがあるでしょう。

「実家がめっちゃ金持ちだ」という場合を除き、奨学金を自己破産すべきではないでしょう。お金よりも人と人との絆の方が大切です。特に家族の絆は…。

そもそも「実家がめっちゃ金持ち」ならご両親に代理弁済してもらう方が良さそうですね。(笑)

一方、証機関保証制度の場合は連帯保証人・保証人がいないため、自己破産しても“誰にも”迷惑をかけることはありません。

ブラックリストに登録される

自己破産するデメリットですぐに頭に浮かぶデメリットは“ブラックリスト”でしょう。

ちなみに、ブラックリストというリスト(名簿)は存在しません。世間で言われるブラックリストとは、信用情報機関(CIC,JICC,KSC)が管理する個人の信用情報に“異動”という金融事故の履歴が記録されることを指しています。

なお、異動が信用情報に記録される(ブラックリストに登録される)ことによる私生活の影響は以下の通りです。

ブラックリストに登録される影響

  • クレジットカードが作れない
  • 住宅/自動車ローンや事業融資などが受けられない
  • スマホ機種代の分割払いができない
  • 本人名義で賃貸契約できない物件がある

最も私生活に影響があること言えば「①クレジットカードが作れない」ということでしょう。実はコレ、半分正解で半分間違いです。

自己破産しても自分名義でクレジットカードを作る方法があります。詳しくは以下のページをご参照ください。

≫ 自己破産後にクレジットカードが作れるまで最短5年!今すぐカードが欲しい時はどうすればいい?
※ブラック主婦でもクレジットカードが持てる理由を教えます

財産が没収される

奨学金の返済ができない状況で没収されるほどの財産を持っているケースは少ないかもしれませんが、もしご両親が実家の名義を変更していたり、自分名義の積み立て預金をしていた場合、それらは財産差押えの対象となるのでご注意ください。

一般的に、財産差押えの対象となるものとして、以下のようなものがあります。

自己破産で没収される財産例

  • 不動産
  • 車、バイク
  • 20万円以上の市場価値が付くもの(パソコンうや宝石類)
  • 銀行預金、外貨預金、株式などの証券
  • 100万円以上の現金

なお、家具や家電などの生活に必要なものや、仕事に必要なもの(パソコン)などは財産差押えの対象外となるものもあります。

また、100万円未満の現金は所有しておくことが認められています。

破産申立期間中は就業制限が発生する

裁判所に破産申立て後、自己破産の手続きがすべて終了して面積が下されるまでの期間中は、以下のお仕事(資格)をすることができません。

破産申立期間中に制限される職業(資格)

  • 警備員
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 公証人
  • 交通事故相談員
  • 固定資産評価員

などなど。

上記に該当しないお仕事をされている場合は気にしなくてもOKでしょう。

とはいえ、上記は自己破産手続き中のみ制限が書けられるものであり、早ければ4ヵ月~6ヵ月程度で復権されるものです。

自己破産手続きの具体的なスケジュールは以下をご参照ください。

≫ 自己破産までの期間は破産申立てから約4ヵ月!借金の取り立てはいつ止まる?

官報に氏名・住所の個人情報が登録される

官報とは、国が毎日発行している機関紙(新聞のようなもの)です。自己破産すると、計2回あなたの氏名と住所が官報に掲載されます。

官報に個人情報が載るリスク

  • 自己破産したことが周囲にバレる可能性がある
  • 闇金業者から営業メールが届く可能性がある
  • 官報に掲載された情報は半永久的に消えない

とはいえ、官報なんで誰も見ませんから安心してください。

「自己破産しても官報を気にしなくていい理由」については以下のページに詳しくまとめていますので、そちらのご参照ください。

≫ 自己破産して官報に個人情報(氏名・住所)が載るリスクとは?

奨学金の返済が困難な時の救済制度

奨学金の返済は月々の返済額を減額する「①減額返還制度」と、返済を一定期間ストップさせる「②返還期限猶予制度」があります。

≫ 奨学金返済の減額・猶予申請の詳細はこちら
※日本学生支援機構の公式サイトへ移行します

つまり、奨学金の返還が苦しくなった時は、返済を減額もしくは猶予することができます。

申請専用用紙に必要事項を記入し、マイナンバーカードの写し(コーピー)と一緒に郵送するだけでOKです。所要時間5分もあれば申請書が作れます。

すでに上記の日本学生支援機構のリンクに申請書のフォーマットが用意されているため、誰でも簡単に申請書が作成できます。あとは郵送するだけ。

もう少し詳しく解説しますね。

減額返還制度を利用する

減額返還制度は、月々の返済額を1/2もしくは1/3に減額して返還する制度です。

つまり、毎月の返済負担を軽減することができます。

減額返還制度の特徴

  • 月々の返済額を半額、もしく3分の1に減額できる
  • 減額返還を利用できる期間は最長180ヶ月(15年間)
  • 返還期間が延長されることによる新たな利子の支払いは発生しない
    ※減額返還制度を利用しても第二種奨学金の利子を総支払額は変更しない

ただし、合計の返済額が減額されるものではないため、トータルの返済期間が長くなることに注意しましょう。

≫ 減額返還制度の手続き方法はこちら

なお、減額返還制度は年間3万人が利用(申請)している制度です(以下の表参照)。

平成29年度 平成30年度 令和元年度
1/2返還 16,448 12,974 11,489
1/3返還 11,604 16,590 19,413
合計 28,052 29,564 30,902

※スマホでご覧の方は左右にスクロールできます。
※引用元:日本学生支援機構,変換金の回収状況及び令和元年度元年度業務実績の評価について

奨学生の人数が473万人ということを考えると、減額返還制度の利用者はけして多くありません。その理由は、減額返還制度よりも返還猶予制度を利用する人の割合が圧倒的に多いためです。

返還期限猶予制度を利用する

返還期限猶予制度は、月々の返済を一定期間ストップしてもらえる制度です。

つまり、返済が困難な状況になった場合は返済を待ってもらえる制度です。

返還期限猶予制度の特徴

  • 月々の返済を一定期間ストップすることができる
  • 返還猶予期間は1回の申請に付き、最長1年適応される
  • 返還猶予期間は10回までの更新が可能(最長で10年間適応)
  • 猶予期間中に新たな利子の支払いは発生しない
    ※返済猶予制度を利用しても第二種奨学金の利子を総支払額は変更しない

ただし、合計の返済額は変わらないことに注意しましょう。そのため、返済猶予制度を利用した期間だけ返済期間が伸びますが、それによる新たな利子は発生しません。

≫ 返還期限猶予申請の手続き方法はこちら

なお、返還期限猶予制度は年間15万人が利用(申請)している制度です(以下の表参照)。

平成29年度 平成30年度 令和元年度
返還猶予申請者数 155,477 140,755 150,169

※スマホでご覧の方は左右にスクロールできます。
※引用元:日本学生支援機構,変換金の回収状況及び令和元年度元年度業務実績の評価について

奨学金の返済が本当に苦しい状況であれば、自己破産を考える前に返還期限猶予制度を利用して返済をストップしてください。

なお、これらの「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」を利用することによるデメリットは一切ありません。
※信用情報にキズが付くことも、クレジットカードが作れなくなることもありません

返済が困難になり滞納してしまう前に、今すぐ申請してください。
※奨学金は3ヶ月以上の、3ヶ月以上の滞納が発生するとブラックリストに登録されます

【補足】死亡、もしくは病気になった場合の返還免除制度

ちなみに、奨学金は以下の場合において返還免除が適応されます。

返還免除が適応されるケース

  • 奨学生が亡くなった場合
  • 精神または身体の障害により働くことができず、返還が困難だと認められた場合

上記のケースにおいては、人的保証制度を利用していた場合であっても、連帯保証人、保証人に返還義務が移ることはありません。

自己破産以外の債務整理で借金負担は減る?

奨学金のみの借金なら上記の減額/猶予制度により、返済負担を軽減することができます。しかし、奨学金以外にも借金を抱えている場合は根本的な解決が必要でしょう。

とはいえ、人的保証制度を利用している場合は「自己破産」という選択をしてもご両親や親戚に返還義務が移るだけなので、全く解決にはなりませんね。

自己破産した経験を踏まえて考えてみても、人的保証を利用している場合には奨学金の借金を解決する方法が思い浮かびません。。

とりあえず、減額返還制度返還期限猶予制度をフル活用して“その場をしのぐ”という以外に効果的な策が思いつきません…。

とはいえ、借金問題の解決方法は自己破産以外にも「任意整理」「個人再生」とう手段があります。

だし、結論から言うと、残念ながらこれらも根本的な解決にはならないでしょう。。

「任意整理」の場合

任意整理とは、利息分をカットすることで返済総額を減額し、毎月の返済負担を軽減する手続きです。つまり、任意整理で減額できる対象は、将来的に発生する利息のみ。

低金利(~2%)の奨学金の場合は、奨学金借入総額に対して発生する利息の割合が少なく、任意整理をしても借金負担はほとんど変わらないため、残念ながら利用するメリットはないでしょう。

また、任意整理で減額された利息分は連帯保証人、保証人に請求がいくため、根本的な解決にもなりません。

任意整理は、クレジットカードのリボ払いやカードローンなどの高金利(年率15%~)の借金に対して効果的な解決方法です。

「個人再生」の場合

個人再生とは、不動産や車などの財産を差し押さえられることなく、借金を1/5に減額し、残り1/5の返済残高を3~5年かけて返済する手続きです。

自己破産の免責までの効果はないものの、借金総額を大幅に減額しつつ、財産を残すことができるというメリットがあります。

しかし、奨学金を個人再生した場合、減額された4/5の借金は連帯保証人、保証人に請求がいくため、根本的な解決にもなりません。

このように、自己破産、任意整理、個人再生のいずれの方法も、奨学金の返済義務をご家族、親戚の中で回し合うだけの手続きになるため“まったく効果的な解決方法ではない”と言えるでしょう。

まとめ:奨学金は自己破産する前に減額or猶予申請を!

残念ながら、人的保証制度を利用している限り奨学金を自己破産で解決することは難しいです。

ただし、機関保証制度を利用して言う場合は、自己破産もしくは個人再生を利用するメリットは大きいでしょう。

根本的な解決が難しいなら、今ある制度を最大限有効活用しましょう。幸いなことに、減額返還制度返還期限猶予制度を利用することができます。

減額返還制度は最長で15年、返還期限猶予制度は最長で10年申請することができます。さらに、これらの制度を利用中に新たな利子は発生しませんし、信用情報にキズが付くこともありません。

例えば、

  1. 返還期限猶予制度を申請して今すぐ返済を止める
    最長10年
  2. 10年後に減額返還制度で月々の返済を1/3に減額する
    最長15年

これにより、25年間は“その場をしのぐ”ことが可能になります。

25年後は経済状況やあなたを取り囲む環境も一変しているはずです。さらに、社会構造さえ大きく変わっている可能性があります(ベーシックインカム制度や奨学金徳政令など)。

そのため、自己破産を考える前に、減額返還制度返還期限猶予制度を利用して、生活の立て直しを図りましょう。

とはいえ、機関保証制度を利用している場合は別です。

返済が苦しくて生活に支障がでている…
返済し続ける自信がない…
すでに滞納が続いている…

このような状況に陥ってる場合、5年後、10年後の将来を見据えた決断が必要です。あなた自身の将来のためにも今できる最善の解説策を探ってみましょう。